あなたに提案された示談、適切かわかりますか?
POINT 低い提案をされやすい賠償項目を知って交渉に備えよう!
★この記事を読むべき方
・保険会社の提案に「〇〇慰謝料」「逸失利益」といった項目がある方
・保険会社の提案が適切なものか低いものかがわからない方
この記事では具体的な賠償項目に触れながら、特にどういった項目があれば注意が必要かを解説しています。
賠償額がわからないことがなぜ問題なのか?
妥当な賠償額、わかりますか?
はじめに、以下の質問について考えてみてください。
- 質問1 知人に100万円を貸しましたが、返してもらえません。あなたが知人に請求できる金額は何円ですか?
- 質問2 あなたは交通事故にあって怪我をしました。あなたが相手(保険会社)に請求できる金額は何円ですか?
質問1の正解は?100万円ですね(利息など細かい話は置いておきます)。
「今80万円しか残っていないから80万円でいいよな?」と提案されれば、「あかんに決まってるやろ!」と言えるはずです。
では質問2の正解は?
わかりませんよね。これだけでは弁護士にもわかりません。
事故前の仕事と収入は?
入院・通院期間は?
怪我は完治した?それとも障害が残った?
障害が残ったならどのような障害が残った?
事故の発生状況は?
…まだまだ確認すべき点がありますが、重要なのは、受け取れる賠償額は様々な要素によって決まり、被害者本人にも妥当な賠償額がわからないということです。
妥当な賠償額がわからないことはなぜ問題なのか?
適切な賠償額がわからないことはわかった!そんなことは知っている!
でも、それがなぜ問題なの?と思った方もいるかもしれません。
質問1のケースでは、受け取るべき金額がわかります。そのため、勝手に減額されたとしてもすぐにそれがわかり、金額自体の争いはまず発生しません。
しかし、質問2のケースでは、相手から受け取るべき金額がわからないため、相手から賠償提案があっても、その金額が妥当なのかどうかがわかりません。
相手が低い賠償提案をしてきても気づけずにそのまま示談してしまいかねないということです。
保険会社はこの点をうまく利用し、特に被害者の方に適切な賠償額がわかりにくい項目については90%以上の事故で低い提案をしているといっても過言ではありません。
なぜ保険会社が適切な賠償額を提案してこないの?と思った方、その理由はなぜあなたは交通事故賠償で損をするのか?で解説しています。
特に注意するべき2つの項目
いよいよこの記事の本題にうつりましょう。
交通事故で支払われる賠償項目の中には、「適切な賠償額であるかわかりやすい項目」と「適切な賠償額であるかわかりにくい項目」があります。
「適切な賠償額であるかわかりやすい項目」=「低い賠償提案をされにくい項目」
「適切な賠償額であるかわかりにくい項目」=「低い賠償提案をされやすい項目」
と言い換えてもいいでしょう。
では、それぞれどういった項目があるのでしょうか?
低い賠償提案をされにくい項目
治療費
治療期間に争いがある場合などを除いて、低い賠償提案をされるケースはあまり見かけません。
治療費は事故によって発生したことやその金額もすぐにわかるため、減額しても容易に気づけることが大きな理由でしょう。
修理費
時価を超える金額は賠償されない、修理範囲の争いといった問題はあるものの、低い賠償提案をされるケースは少ない印象です。
特に修理済みのものなら、減額されたら治療費同様、おかしいことに容易に気づけるでしょう。
休業損害(サラリーマンに限る)
休業損害は、事故による怪我で働けなかった結果得られなくなった収入を賠償する損害です。
「サラリーマンに限る」としたのは、事故前の給料が安定し、休業した日数から減少した収入がすぐに計算できるためです。勤務日と給料が決まっている方なら同様に考えていただいていいでしょう。こういった方は提案された金額が給料より低いと違和感に気づける場合が多いためか、低い金額で賠償提案されることが少ないように思います。
★サラリーマン以外の方(専業・兼業主婦の方、自営業の方)に対しては、休業損害でも低く提案されている方が比較的多い印象です。
こういった方は、収入減少が算定しにくい・一見すると収入が減少していないため、低い提案をしても気づきにくいからでしょう。
以上の項目は、被害者の方も提案内容が妥当でないことに気づきやすいという理由からか、保険会社からの提案で比較的被害者の想定する金額を提案していることが多い印象です。
低い賠償提案をされやすい項目
入通院(傷害)慰謝料、後遺障害慰謝料
低い賠償提案がなされていることがもっとも多い項目でしょう。
慰謝料は精神的な損害を金銭で評価したもので、交通事故で認められる慰謝料には一般的には入通院(傷害)慰謝料や後遺障害慰謝料という2種類があります。
これらの慰謝料について、どのように金銭評価するのかを知っている方はどれだけいるでしょうか?
怪我の治療や日常生活を取り戻すのに大変な状況で、CMも見たことのある有名な保険会社から「これが当社の基準です。皆様にこの内容で提案しています。」と言われると、その提案内容に疑問を持つことができるでしょうか?
「皆に同じ提案をしているならこんなものなのかな。」と納得して示談してしまう方がいるのも無理はありません。
しかし、妥当な賠償額がわからない=低い提案をされても気づけないという問題点を理解された今なら、保険会社が慰謝料について低い金額で提案をしてくることも、その理由も理解できるはずです。
逸失利益
逸失利益は事故によって将来得られなくなった収入の賠償です。
将来の損害なので、現在収入がない方(特に専業・兼業主婦や、学生や20代の無収入・低収入の方) でも認められる場合は意外と多いものです。
しかし、損害が生じたことやどれだけの損失なのか被害者本人には実感しにくいところでもあります。
そのため、現在無収入であるという理由で0円とする、何らかの賠償提案をしても賠償額を抑えようとするといった方法で、低い賠償提案をされがちです。
以上で紹介した慰謝料と逸失利益に共通するのが、適切な賠償額であるかわかりにくい項目であるということです。
適切な賠償額であるかわかりにくい項目=低い賠償提案をされやすい項目ということを十分理解していただけたのではないでしょうか。
番外編 謎の減額割合について
保険会社の示談提案では、「交渉時なので80%で提案します。」という謎の減額割合を提案をしてくることがあります。
保険会社が独自に定めた基準で、提案自体は違法ではありません。そのため、被害者の方が納得して示談されれば有効な示談となってしまいます。
しかし、交渉中は一定割合を減額すべきという法律上のルールはなく、弁護士が関与して交渉するとほとんどのケースで譲歩してきます。
保険会社の示談提案に過失割合以外で謎の減額割合がある方は、99%低い提案をされているといってよいでしょう。
まとめ
この記事では、適切な賠償額がわからないことの問題点と、特に低い提案をされやすい項目について解説しました。
交通事故の賠償は人生で何度も起きることではないので、ご自身で適切な賠償額を計算できる必要はありません。
しかし、損しないための必須知識として、適切な賠償額がわからない項目=低い賠償提案がなされている可能性が高いということは、頭に置いておくようにしましょう。
これを知らないだけで、保険会社の誘導にのせられて気づかないうちに数十万円、数百万円を損してしまうかもしれません。
特に保険会社の示談提案で、○○慰謝料や逸失利益といった項目がある方や謎の減額割合がある方は、そのまま示談していいのかを慎重に検討し、不安が解消できないなら一度弁護士にご相談することをお勧めします。
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