老い支度・終活

第1回 老い支度を考える方へ

老い支度・終活を考える方へ はじめに

 高齢化が進んでいると言われて久しいですが、高齢になっても活力のある方は多く、私の周りでも、まだまだ現役で仕事をされ、衰えを感じさせないお元気な高齢者がたくさんいらっしゃいます。

 60代、70代の方では老後はまだ先の話と考えている方もいるでしょう。

 

 しかし、お元気な方であってもいつか老いはきますし、老後の不安が全くない方はいないのではないでしょうか。

 老後の備えは十分か、認知症になったときの住まいや財産はどうするか、衰えても家族に迷惑をかけずにいられるか、自分の死後家族がもめずに仲良くいられるのか、単身で子供もいないが幸せな老後が送れるのか、様々なご不安があると思います。

 

 この記事では、こういった老後の漠然とした不安を解消し、現在と老後の生活を充実させるため、老い支度の必要性や具体的な方法についてご紹介していきます。

 今回はその1回目になります。

対策不足でおきたトラブル

 老い支度・終活を怠ったために生じるトラブルは様々なケースがありますが、ここでは2つの例、詐欺被害相続トラブルについてご紹介します。

詐欺被害トラブル

トラブル例1
 Aさんはよく行く百貨店の社員から「カードが不正使用されている。」「警察や銀行にはこちらから連絡する」との連絡を電話で受けた。その後すぐ警察から連絡があり「捜査に必要だから暗証番号を教えてほしい。」「不正使用を防ぐためキャッシュカードは預かる。」と言われてキャッシュカードを預けてしまった。

 Aさんが怪しく思って銀行口座を確認したところ、1000万円あった普通預金がすべて引き出されており、百貨店の連絡も警察からの連絡も嘘だとわかったが、犯人が特定できず、預貯金を失ってしまった。

 高齢者は詐欺のターゲットとされやすく、特殊詐欺(オレオレ詐欺、架空請求、還付金詐欺など)の被害者の約80%、オレオレ詐欺では被害者の約97%が65歳以上の高齢者というデータもあるほどです*1。

 

 これは、年齢による判断能力の衰えだけが原因ではなく、高齢者は退職金や貯金等でまとまった資産を保有していると思われ狙われやすいこと、人生経験が豊富な高齢者ほどまさか自分は騙されないだろうという過剰な自信を持ち詐欺に気づけず人に相談しない傾向があること、などが原因と考えられます。

 実際に、警察庁の調査によれば、詐欺被害にあった方の95%の方が「自分は(どちらかといえば)被害に遭わないと思っていた」と回答しており、被害に遭わないと思っている人の方がより詐欺被害に遭っているという実態もあるようです*2。

 

 最近では振込を求めるだけでなく、銀行協会や警察などから不正使用の疑いがあるなどと言われてキャッシュカードや通帳を渡すよう求めてくるような被害もおきていて、「警察に逮捕されないためにはキャッシュカードと通帳が必要。」など騙されてキャッシュカード等を渡してしまい、合計9800万円もの預金を引き出されるという被害もありました。

 

 こういった詐欺被害は、今すぐに対応するよう求められたり、警察に相談できない状況を作られたり、詐欺かどうかは自分で判断できると過信したりした結果、誰にも相談せずに被害にあうことが多いのです。

 トラブル例でも、電話を受けた時点で本人が警戒心をもつ、普段から家族や友人、または弁護士等による見守り制度(ホームロイヤー、次回の記事で紹介します)など安心して相談できる相手がいることで、こういった被害は避けられたかもしれません。


*1 警察庁「平成30年における特殊詐欺認知・検挙状況等について」
*2 警察庁「オレオレ詐欺被害者等調査の概要について」

 

相続時のトラブル

トラブル例2
 早くに夫を亡くしたBにはCとDの2人の子がいたが、Dとはあまり交流がなく、CがB所有の自宅に同居しBの身の回りの世話をして生活してきた。

 BはCに世話になっているという感謝の気持ちから、生前よりCやDに「自分の財産はCに譲りたい。」と伝えており、Dも特に反対はしていなかったため、Bの意思を遺言などで形にしてはいなかった。しかし、Bさんの死後、DはCに対し「自分もBの財産の半分を受け取る権利がある。」と主張し始めた。

 CはDに「母は自分に財産を残したいと言っていた。お前も聞いていただろう。」と主張したが認められず、Bの自宅は売却し、Cは住む家を失い引っ越しを余儀なくされてしまった。

 相続トラブルは、仲違いをしており生前から紛争が予想される場合もあれば、生前はもめていなかったのに実際に相続の話になると意見の対立が発覚するという場合もあります。

 生前に亡くなった後の話はためらわれると考え、本人を含め親族間で十分な話し合いや取り決めをしていないと、互いに考えていることが異なり争いになる、亡くなった方の気持ちが反映されなくなるという事態になってしまいます。

 

 上で紹介したトラブル例2では、Cに自宅を相続させる(紛争を回避できる程度にはDにも財産を残す)遺言の作成などをしていれば避けられたトラブルだったといえます。

終活・老い支度の必要性

 「まだ元気だから老後のことはもう少し先に考えよう。」「対策の必要性は感じているが何をすればいいのかわからない。」「今後のことよりまずは今の生活を考えたい。」など、現在様々な理由で対策をとれていない方も多いでしょう。

 しかし、元気だからこそできる話やとれる対策があり、先延ばしにしているうちに対策がとれなくなってしまうと、ここで紹介したようなトラブルになりかねません。

 

 私は弁護士として相続トラブルや詐欺被害のご相談をお聞きする度に「〇〇をしておけばよかったのに。」と、常々老い支度の重要性を実感しており、元気なうちに対策をとることで不安のない幸せな老後を過ごせる方が一人でも増えればと思い、老い支度の提案にしています。

 

 このコラムでは、一般的な老い支度の紹介のほか、弁護士の視点から老後のトラブルに巻き込まれないための対策(ホームロイヤー、見守り制度の活用)、認知症になったときのための備え将来家族に確実に・トラブルなく資産を承継させる方法など、老後の不安を解消するための対策を紹介していきます。

 老い支度・終活をはじめるきっかけは定年退職、一定の年齢(60歳、70歳)になった、など人それぞれです。

 心身ともに元気なうちに老い支度・終活をし、老後の漠然とした不安を解消し、現在の生活を充実させることにもつながると思いますので、この記事が老い支度について真剣に考えるきっかけになれば大変うれしく思います。

 

 老い支度について、ご自身のお悩みにどのような対策が有効かをご相談したい方はこちらからお問い合わせください。

 この記事をご覧になられた方の老い支度や相続トラブルは初回相談(30分)無料で対応していますので、現在トラブルやお悩みを抱えている方だけでなく、「何から始めればいいかわからない。」「どのような対策があるのかまずは話を聞いてみたい。」といった方でも気軽にご相談ください。

 

*老い支度・相続の初回相談の方は電話の際、「コラムを見て老い支度(相続)の初回相談をしたい。」とお伝えください。

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